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2004年09月28日

聖杯:読書日記

田辺幹之助/ベッティーナ・ザイデルヘルム(責任編集)『ドイツ東部のプロテスタント教会所蔵作品による聖杯:中世の金工美術』国立西洋美術館、2004年。ISBN 4-906536-27-1

2004年6月29日から8月15日まで国立西洋美術館(東京、上野)において開かれた展覧会「ドイツ東部のプロテスタント教会所蔵作品による聖杯:中世の金工美術」展示物をおさめたカタログ。
同展覧会は国立西洋美術館/ザクセン・プロテスタント教会/ザクセン・プロテスタント教会美術文化財団/(財)西洋美術振興財団が主催し、この手の試みでは日本初のものであるということでした。国立西洋美術館の地下スペースを使い、聖杯本体をはじめミサ用具の数々とそれを作るための工具や工程を展示・解説。工芸史・美術史・文化史等多岐にわたる関心に刺激を提供していたように思われます。
 本書は上記展覧会のカタログとして、315頁にわたり7本の論文と53枚のカラー写真を含む多数の聖杯図をおさめたものです。

所収論文は以下の通り:

ベッティーナ・ザイデルヘルム「ザクセン・プロテスタント教会の中世美術:展覧会とその背景について」39-51頁
ヨハン・ミヒャエル・フリッツ「中世の金細工と展覧会出品作品について」52-61頁
エアハルト・ブレポール「850年前、聖杯はこのように作られた」62-68頁
ライムント・ブリューム「聖餐を理解するために」69-75頁
徳善義和「ルターの宗教改革における聖餐と聖餐用具:中世と比べて、なにが変わったか、変わらなかったか」76-81頁
ベッティーナ・ザイデルヘルム「ザクセン教会地域に保存されてきた典礼具の機能と意味、その歴史」82-87頁
田辺幹之助「中世末期と近世初期の金工美術と銅版画」89-105頁

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2004年09月27日

中世生活における聖と俗:読書日記

ハンス=ヴェルナー・ゲッツ『中世の聖と俗:信仰と日常の交錯する空間』津山拓也(訳)八坂書房、2004年。
ISBN 4-89694-738-x

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 ゲルト・アルトホフ『中世人と権力』に続く、3巻本のシリーズ「中世ヨーロッパ万華鏡」の2巻目。アルトホフの本が政治を焦点にして、現代とは異なる中世人たちの行動規範を紹介したのに対し、ゲッツのこの本はタイトルにある「聖と俗」に焦点をあてています。
 現代日本に住む非キリスト者である読者たる私たちにとっても(あるいはキリスト者であるとしても)、中世におけるキリスト教世界の住人の行動理念は、…少なくとも現代人の観点からして…キリスト者的であるとも、世俗的であるとも、必ずしも言えないかもしれない。中世人にとって生活世界はどのようにキリスト教的であり、かつ世俗的であったか。
 著者はこの観点から、本書を二つの部分に分けて紹介しています。まず前半で、当時(特に中世初期〜盛期)の聖職者と俗人の生活世界がどの程度まで「聖的」であり「俗的」であったか。俗人については結婚と家族という生活世界から、聖職者については修道士の生活世界から、そのあり様を覗き見てゆこうとします。
 また後半では、生活世界から覗き見ることのできた中世人のこころ(メンタリティ)が、概念としてはどのような表現に反映しているのか…「死」と「悪魔」という象徴を対象に、さらに覗き見てゆきます。

 近年の中世史研究では「中世世界をあまりに世俗的に見ることを戒める」視点と、「中世世界をあまりにキリスト教的に見ることを戒める」視点とが拮抗しているように思われます。しかし具体的には、それはどのようにキリスト教的であり、世俗的でありえたでしょうか。単に牽制をなすだけではなく、建設的に仮説を提示し続けてゆくために、本書はとても刺激的な材料を提示しているように思われました。

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2004年09月20日

大聖堂/ゴシック:読書日記

馬杉宗夫『大聖堂のコスモロジー』講談社現代新書、1992年。
ISBN 4-06-149120-2

酒井健『ゴシックとは何か』講談社現代新書、2000年。
ISBN 4-06-149487-2
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 どちらも新書サイズの、読みやすい大聖堂入門/ゴシック入門。両者は必ずしも同一の対象を研究するジャンルというわけではないのですが、我々日本人にとってゴシック芸術の代表選手としての大聖堂の印象は、やはり強いものではないかと思います。
 日本の書籍では、ゴシック/大聖堂研究ジャンルのものではもっぱら建築史の観点からのものが大半を占めてきたように見えます。この分野での偉大な紹介者とも言える前川道郎先生の諸著作をはじめとする、そのような建築史ジャンルとしてのゴシック/大聖堂研究視点から書かれたのが前者の『大聖堂のコスモロジー』。現在おそらく絶版になっているかと思われますので図書館か古書店でしか見つけることができませんが、非キリスト者にとってなじみの薄い教会堂(聖堂)の「パーツ」について理解することのできる本です。

 後者「ゴシックとは何か」はむしろ文学・社会史系歴史学の側に立って書かれたもの。大聖堂について語るというスタンスは変わりませんが、関心は標題にあるように、ゴシック大聖堂を生み出した「ゴシックなるもの」そのものについて叙述しています。ゴシックの成立・変遷・復権という、中世から近代にかけての展開を追っていくので、一般的な読本としてはこちらのほうがより刺激的であると言えるでしょう。こちらは前者のスタンスの幾分かに関しては批判的なので、両者を比較して読むのも面白いかと思います。

 実際のところ、これほど同時に2冊読んで双方の視点からの刺激を受けたという経験は、私にとっては珍しいものでした。私もまた

大聖堂のなかで最も生命力がなく、宗教性に乏しい大聖堂だった(酒井、198頁)

 と評されてしまったケルン大聖堂の美しさを思い出しつつ、宗教性というものについて思いを馳せてみたりしました。

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2004年09月16日

西洋古代史研究入門:読書日記

伊藤貞夫・ 本村凌二(編)『西洋古代史研究入門』東京大学出版会、 1997年。
ISBN 4-130-22016-0

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 最近のマイブームである「ガリア・ベルギカ」関連の調査をするために、研究動向を見てみようと思って手に取った一冊。
 
 「西洋古代史」と言われてどこからどこまでを範囲にしているのか、私たち素人にはわかりづらいものですが、これは「ギリシア・ローマ史」を指すのですね。ガリア・ベルギカ(現ベルギー・フランス・ドイツの一部)もまた帝制ローマの属州の一つとしてこのジャンルの下位に区分されるわけですが、そうなると「ドイツ史」や「ケルト学」などとの接点が見えにくくなっていると言えなくもないのかな。

 そのようなわけで、ギリシア史・ローマ史に関する簡明な概説、および両者を扱った研究動向の紹介がこの本の内容。近年の歴史学の動向を反映していて、国制史と経済史は最低限。社会史・宗教史などがピックアップされており、また「社会的結合」概念をふまえた人間関係に関する諸項目などが印象に残ります。ギリシア・ローマ時代の各ヨーロッパ周縁地域(バルカン・アナトリア・属州アフリカ・ヒスパニアなど)に関するインフォメーションもありますが、やはり物足りなく感じるのではないかと思います。

 そして「研究入門」とうたっているとおり、あくまで研究のための入門書という位置づけになっています。つまり(古代史の)歴史入門書として、「読み物として」読む本ではないかなと。その役割は他のシリーズにゆだねられていると言って良いでしょうね。

 また古典古代史というジャンルの特性上、紹介されている書籍は圧倒的に外国語書籍です。少なくとも英語で本を読んでみようという人間でないかぎり、有効にこの本を活用できない。その意味では大学生や研究志望者向けの入門書ということになるでしょう。

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2004年09月04日

ヴァチカン:読書日記

南里空海(文)野町和嘉(写真)『ヴァチカン:ローマ法王、祈りの時』世界文化社、2000年。
ISBN 4-418-00515-3

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 雑誌「家庭画報」2000年2月号から4月号まで連載されたものを、新たに全編書き下ろしたもの、とのこと。
 2000年をきっかけとして非カトリックである著者が見た、「大聖年」を焦点としたエッセイ。話題の中心はこの第3000年紀の扉を押し開けた教皇である「法王」ヨハネ・パウロ2世の取り組み、生涯について。本書の字数のおよそ半分がヨハネ・パウロ2世関連で占められています。また頁数は少ないものの、システィナ礼拝堂とミケランジェロに関する章も興味深いです。
 この本のポイントは、写真家・野町和嘉氏により提供された多くの写真でしょう。教皇の肖像をはじめ、ヴァチカン市国内の美しい聖堂たち、ミサに列席し真摯に祈る人たちの群れ、そして聖堂を飾る絵画・彫像の数々。キリスト者でない私にも強くうったえてくる迫力が、そこにはありました。

関連情報

 キリスト教・教皇庁に関する情報源は多く存在しますが、現在のところ下記の文献に接しています。

小林珍雄『法王庁』(岩波新書604) 岩波書店、1966年。
Barrett,David B.(編) 『世界キリスト教百科事典』教文館、1986年。

 また野町和嘉氏に関する情報は下記を参考にしました。

 野町 和嘉氏財団法人 大同生命国際文化基金

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