2004年08月24日
中世の権力・紛争・調停:読書日記
ゲルト・アルトホフ『中世人と権力:「国家なき時代」のルールと駆引』柳井尚子(訳)八坂書房、2004年。
ISBN 4-89694-737-1
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中世に「国王は絶対的な権力を掌握」しておらず、中世に「近代に相似した国家」は存在しない。一般的に承認されつつも、しばしばその逆の印象が流布する「中世の支配」。中世の支配とはどのようなものか、中世の「国家」とはなんなのか。この点について平易に説明してくれています。
「第一章:欠如と差異」でまず上記のような、近代的制度・支配との差異を指摘し、「第二章:特徴と機能」ではアルトホフが近年強調してきた、権力・支配関係の中のコミュニケイション関係を軸にすえた、中世の支配権の実際について解説してます。アルトホフの解説の軸は「協議consillium」にあります。近代的制度的合理主義よりもむしろ、縁故・慣習に則った政治作法にしたがって支配権が(国王も含め)構築されたという説明です。
「第三章:変化の予兆」では、上記のような中世的支配と、より後代(近世・近代)の支配の特徴につながってゆく変化がどのような分野で見られるようになったかということを、「中世都市の支配権」「ブルゴーニュ公国の支配制度」を例にとって紹介しています。
ブルーノ『ザクセン戦記』やランペルト『年代記』などの史料にあらわれた事例に即して中世の支配のあり方を解説し、魅力ある文章に仕上がっています。特に第一・二章ではカロリンガー・ルートヴィヒ敬虔帝とザリアー・ハインリヒ4世の事例を中心にして詳細な事例を見出すことができます。
第四章二節はアルトホフの同僚であるヘルマン・カンプH.Kampが執筆、ブルゴーニュ史の専門家による解説を読むことができます。
関連情報
最近の研究動向におけるアルトホフ(アルトホーフ)の方向性は、服部良久教授の研究動向で解説されています。
服部良久「中世ヨーロッパにおける紛争と紛争解決:儀礼・コミュニケーション・国制」『史学雑誌』113-3、2004年。330-352頁。
作成者 フルカワマサユキ
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