2004年10月11日
金印勅書Bulla Aurea(2)
その2です。
金印勅書には前文がつけられており、韻文のような部分と散文(法的な証書等に付されているArengaと類似した文章)があります。今回はそのうちの韻文部分に関するメモ。
この前文は主へ祈りを捧げ、地上で平和が破られることなく続き、皇帝カール(4世)がそれを護ることができるよう助力を願うという内容になっています。その冒頭は
Omnipotens eterne deus, spes unica mundi,
Qui celi fabricator ades, qui conditor orbis,
Tu populi memor esto tui....
zit.Weinrich, S.314.
との書き出しで始まっています。訳すと
「おお全能なる主よ、地におけるただひとつの希望よ、
天の創造主よ、世界の創設者よ、
あなたがあなたの人々の記憶にとどまりますように。…」
となります。訳文の前二つは引用であることがわかっており、引用したWeinrichやエアランゲン歴史学会によるならば、これはセドゥリウスの「復活祭祈祷文」Sedulius, Carmen Paschalisから取られている(I. 60-.)ということになります。セドゥリウスは5世紀の詩人で、上述の書のなかでは旧約・新約聖書を要約しています。
さてこのことから、この韻文部分が祈祷文の性格を持っていること、詩編に類似した形式に則っているらしいと言うことが推測されます。
また(ここからは完全に見込み・仮説でしかないのですが)、この韻文が祈祷文としてミサで用いられるのと類似の形式に従っているのだとすれば、この韻文の内容・形式(とくに歌い出し)は、ミサの祈祷文がしたがっている諸種の規則(文章が制定された期日、歌われるべき内容)に、自らもしたがっている可能性を考えることができるかもしれません。
例えば、聖母アンティフォナは(1年を4期に分けて、それぞれの季節にのっとった歌い出しがなされる歌です)、「三位一体主日の第一晩課から待降節第一主日前の土曜の九時まで」の期間において、祈祷文は次のように始まるようです:
Omnipotens sempiterne deus qui gloriosae全能にして永遠の神よ…。
zit.ハーパー『中世キリスト教の典礼と音楽』教文館、2000年。 203頁
単なる偶然の一致なのかもしれません。しかし、金印勅書のこの前文を含む部分が公布されたのは「1356年1月10日」のニュルンベルク議会において、です。そしてこの日は「三位一体主日の第一晩課から待降節第一主日前の土曜の九時まで」に含まれているようです…。
ミサ文形成のしくみについてはまったく無知なのですが、このような視点も存在する可能性があるということをメモしておきます(自分用メモかも)。
作成者 フルカワマサユキ
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