2004年10月26日
金印勅書Bulla Aurea(3)
その3です。今のところ、ちょっとしたメモ程度。
金印勅書第一章は「選帝侯の来駕Geleitに関して」。金印勅書への印象に強い影響を与えている、皇帝を選定する選帝侯たちが集う際の安全規定条項に関する章です。 Geleitという語は一般的には「護送」という訳語が与えられており、ひとが移動する際に約束されたり異動するエリアの者に対し規定されたりする安全・平和条項と言えます。
その第一章の第二項(通行エリアの世俗諸侯・貴族その他に向けての、上記の来駕に関する禁止・規定条項)において、
Et eosdem, quos ipso facto exhunc prout extunc omni iure privamus, deinceps cuilibet hominum auctoritate propria et sine iudicio seu invocatione magistratus cuiuslibet impune licebit invadere,...
zit.Weinrich, S.322.
というくだりがあります。
来駕し通過してゆく選帝侯およびその代理たる施設たちに危害を加えたりすることのないよう定めた上で、それに反したものに対しては帝国からの封その他の特権を剥奪し、「法の外におく」ものとしています。この「法の外にお」かれたものに対しては、誰でもが「magistratusの判断や審判を必要とすることなく、罰せられることもなしに攻撃することができる」と言っています。
ここでメモしておきたいのは、引用文中および訳語中のmagistratusです。
この語はしばしば近世に入ってから、Obrigkeitつまり「お上」という訳語に引き寄せられてきています。この「お上」という語感に関しては、日本でもドイツでも近いニュアンスを持っていると思われるのですが…金印勅書が公布された14世紀後半の時点で、このmagistrat=お上、というニュアンスが一致していたかどうかは、実はよくわかっていないかもしれません。
magistratはラテン語では一般的に「役所、役人」を意味しており、これがそのままストレートに「お上」という権威的なイメージにまで結びつくかどうかは不透明なままです。ですので引用元のWeinrichも、またA.Buschmann, Kaiser und Reich. 2.Aufl. S.112.も「所轄のAmtmann/Behörde」というニュートラルな訳語を宛てています。「ドイツ法用語辞典」では、「お上」としてのmagistratusも、「役所、役人」としてのmagistratusも、その頻出は15世紀も後半にはいってからと見ています。このニュアンスをどちら側に確定できるのでしょうか?
参考
作成者 フルカワマサユキ
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