≪ ローマ帝国時代のガリア・ゲルマニア・ブリテン | 西洋史一般 | ビザンツ史への扉:西洋中世史との関連で ≫

2004年09月13日

リーメス(リメス):Limes

 しばしば中国の「万里の長城」と比較される、ローマ帝国国境の防壁「リーメス(リメス)」。現存するその規模は、実際のところ比べ物になるわけではありません。ですがこの国境防備施設の残滓を見たときに、それぞれの側でローマ人・ガリア人・ゲルマン人たちが暮らし・戦い・交流していたという記憶を呼び起こされることこそ、歴史の美しいロマンであると表現できるのではないでしょうか。

 さてこのリーメスですが、高校世界史(世界史B)の教科書には記載されていないようです。確認したかぎり、山川出版社『詳説世界史』にはありませんでした。リーメスに限らず、ローマ帝国の辺境地帯・属州の姿というものは、私たちにはあまり伝えられていないものです。その一方で、歴史に関心を持つ者がまず読むべき記録書として提示されるカエサル『ガリア戦記』やタキトゥス『ゲルマニア』を面白く読むためにも、イタリア半島外のローマ帝国領域についての情報が、より広く紹介されてほしいなと願っています。

 リーメスの簡単な解説は、辞典類では以下のように説明されています。

 ローマ帝国の国境。帝国の拡大が一段落する頃から、堡塁や信号所を備え守備隊が警備をする恒久的な国境が生まれ、帝国の安寧の維持に貢献した。ブリタニアのハドリアヌスの長城やライン・ドナウ間の防柵が大規模。
(『角川世界史辞典』西川正雄ほか編、角川書店。2001年、1007頁)
 ローマ帝国時代、ローマの征服地をゲルマン人から守るために、ライン川とドナウ川を結んで築かれた長城的築堤。紀元90年頃着工。160年頃完成。全長約550kmに100を超える砦を配したが、260年頃アレマン族によって突破、破壊された。
(『山川世界史小辞典 改訂新版』世界史小辞典編集委員会編、山川出版社。2004年、748頁以下)

 山川版ではドイツ域内のそれのみに対象が限定されており、山川版と角川版とのそれぞれの説明は、ささいならざる相違があるように読み取れます。本記事ではDer kleine Pauly. 3.Aufl.1964-75.をも参照した上で、角川版の理解に従いたいと思います。両者のこの説明の相違がなぜ生じているのかはわからないのですが、高校教科書にリーメスが記載されない事実と関係があるのかもしれません。

作成者 フルカワマサユキ

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